
森林破壊の面積について
世界の森林面積や森林破壊のデータには、国連食糧農業機関(FAO)と世界資源研究所(WRI)のものがあります。国連食糧農業機関(FAO)は各国からの報告を参考にしているのに対して、世界資源研究所(WRI)は衛生画像を基にしており、森林の定義や測定方法が異なるため、森林面積や森林破壊の数字が異なります。
国連食糧農業機関(FAO)のデータでは、世界の森林面積は2020 年時点で約41 億ヘクタール(陸地面積の約31%)と推測されています。その一方で、世界資源研究所(WRI)が運営するグローバル・フォレスト・ウォッチ(Global Forest Watch)では、2020 年時点での世界の樹木被覆面積は約40.2 億ヘクタール(陸地面積の約30%)と推定されています。
森林減少についても、国連食糧農業機関(FAO)と世界資源研究所(WRI)では定義が異なります。国連食糧農業機関(FAO)のデータによれば、2010~2020 年で年間あたり約470 万ヘクタールの森林が減少していると推定されています。この数字は、森林破壊面積から植林・自然回復による増加を差し引いた面積です。森林が農地などに転換されて失われた面積は、年間あたり約1,000 万ヘクタールに達します。国連食糧農業機関(FAO)では、森林火災や伐採後の植林など一時的に森林が失われたとしても、農地や放牧地に転換されるなど土地利用が変わらない限りは減少にカウントされません。
一方、世界資源研究所(WRI)の定義では、国連食糧農業機関(FAO)では「森林」と見なしていないパーム油の生産のためのアブラヤシ農園など樹木作物の農園や木材や紙パルプの生産のための植林地などでの一時的な伐採や、森林火災の面積も「樹木被覆損失」として減少にカウントされるため、国連食糧農業機関(FAO)よりも数字が大きくなります。世界資源研究所(WRI)では熱帯地域での森林減少が特に強調されており、2020 年には1,220 万ヘクタールが失われたと推定されています。世界全体の森林破壊のうち、熱帯地域での森林破壊が94% 以上を占めているとされています。
森林破壊の原因について
世界で失われている森林面積の約95% が熱帯地域で発生しています。Our World in Data のサイトでは、熱帯林破壊の主な要因がデータとともに詳しく解説されています。特に牛肉生産のための牧草地拡大が、熱帯林破壊の大きな原因となっていることが強調されています。
具体的には、以下のようにまとめられています。
また、同ページではパーム油、大豆、林業製品など他の主要な要因についても詳しく説明されています。特に大豆については、以下のような間接的な影響が指摘されています。
森林の生物多様性について
森林の生物多様性については、FAO(国際連合食糧農業機関)の世界森林白書2024(The State of the World’s Forests 2024)によくまとめられています。国際自然保護連合(IUCN)が2024 年に発表した世界初の樹木全体評価(Global Tree Assessment)によると、評価対象となった約47,282 種のうち、3 分の1 以上(16,425 種、約38%)が絶滅危惧種に分類されており、気候変動による異常気象や生息地の変化も大きな要因の一つとされています。
森林破壊による炭素排出について
森林破壊による炭素排出およびその貿易との関係については、Our World in Data のサイトにまとめられています。また、Global Environmental Change というサイトのVolume 56, May 2019, Pages 1-10 では、「森林破壊は、人為的温室効果ガス排出の第2 位の原因であり、主に林業と農業の拡大によって引き起こされています。」と指摘されており、森林破壊がどのくらい炭素排出に結びついているかが示されています。
その他参考になるサイト
泥炭地という言葉は日本では、あまり耳慣れない言葉ですが、地球環境に大変大きな影響を与えている存在です。枯れた植物が水につかった状態がつづくと、微生物の活動が抑制されて泥炭が形成されるところがあります。泥炭地は湿地でもあり、莫大な炭素が貯蔵されています。しかし、泥炭地が開発されて乾燥すると、泥炭は微生物により分解されて二酸化炭素を排出します。さらに火災にあうと大量の二酸化炭素を放出し、地球温暖化を加速します。泥炭地は世界中にあり、インドネシアなど熱帯の泥炭地では、高い樹木が森林を形成しており、その倒木が泥炭化するので、泥炭層が厚く10mをこえるところもあり、とくに大量の炭素を蓄積しています。ラムサール条約事務局発行の世界湿地概況2018 年版によると「泥炭地は陸地面積のわずか3% しか占めていないが、 世界中の森林の2倍に匹敵する炭素を貯えている。」としています。
泥炭地を含む湿地の重要性は、ラムサール条約(1975年発効)などで、世界中の国々にも理解され、さまざまな取り組みも行われてきていますが、あまり開発が行われてこなかった熱帯の泥炭地でも、紙製品をつくるためのアカシアや、パームオイルをつくるためのアブラヤシのプランテーションが大規模に開発されるようになり、泥炭地が排水されて地下水位が下がって乾燥し、泥炭層にまで広がる大規模火災もたびたび起こって大量の二酸化炭素が放出されるという危機的な事態となっています。さらに、熱帯の泥炭地はオランウータンなど貴重な動植物を支え、生物多様性を支え、水を浄化する、地球の宝ともいうべきところです。
熱帯だけではなく、泥炭地を含む湿地は人間を含む多様な生物の生存のために、欠かすことのできない存在であり、守っていかなければなりません。
EUDR とは事業者がEUに供給する商品作物が森林破壊や森林の劣化にかかわっていないことを事前に調査、確認しなければ、EUに輸入することが許されないというEUの規則です。また、EUから輸出される商品についても同じことが求められます。
この規則の対象は、以前は木材だけでしたが、食肉やパーム油なども森林破壊に関わっていることが認識されるようになり、他にコーヒー、カカオ豆、大豆、天然ゴムとこれらを原料とする皮革、チョコレート、家具などの派生商品も含まれまることになりました。証明のやり方も厳密さをもとめられます。この規則がうまく機能すれば、世界の森林破壊が大幅に抑制されることが期待されます。
この規則はEU の理事会や議会でも承認され、2023 年6 月に発効し、2026 年12 月から適用が開始される予定となっています。
EUDRのDRとはDeforestation Regulation のことで、直訳すれば、「森林破壊規制」となりますが、「EU森林破壊防止規則」(独立行政法人経済産業研究所)、「EUの森林破壊防止のための評価調査(デユーデリジェンス)規則」(日欧産業協力センターなど様々に翻訳されています。
EUDRの義務を課されるのは、直接にはEU 側の輸入業者になるようですが、輸入業者が義務をはたすために、輸出側も情報を提供できなければ、EU に輸出することはできなくなります。事業者に課されるEUDR の義務は、「材料産地の地理的情報表示、製品が森林破壊していないことおよび現地法を遵守していることのデューデリジェンス、デューデリジェンス宣言書の添付等」(独立行政法人経済産業研究所ホームページの田辺靖雄氏のコラム「EU 森林破壊防止規則の円滑な実施に向けてより緊密な官民対話を」より)で、それぞれかなり厳密な証明が必要とされます。
この義務を果たすことは、かなりハードルが高いようですが、この規制は森林破壊にかかわらないサプライチェーンの構築をめざすものであり、これが実現すれば、森林破壊の抑制に大きな役割をはたすと考えられます。
多くの事業者がEUDR への対応をすすめていくことが期待されます。また、EU との貿易とは無関係の企業であっても、EUDR を参考に、すすんで森林破壊にかかわらないサプライチェーンの構築を目指していただければ、さらに大きな成果が期待されます。
EUDRのことを詳しく調べるのは、なかなか難しいのですが、欧州委員会(EUの内閣にあたる行政機関)のホームページや独立行政法人経済産業研究所(RIETI)、農林水産省などのホームページは参考になると思います。












